ふじかわきっず通信

インフルエンザの流行がやってきた

今回は、予想外に早期に始まったインフルエンザについての内容です。前回の内容の後説と考えていただき、合せて読んでいただければ幸いです。                                

         

futaba01a.gif 1)インフルエンザ検査と5つのインフルエンザ治療薬について   
       
                             
今年のインフルエンザはA香港型からはじまりました。いわゆる典型的なインフルエンザで「高熱、頭痛、節々が痛い」で始まり、熱性痙攣や脳症などの中枢神経症状を併発しやすいのが特徴です。現時点では、ほとんどの方が軽症で家族単位の流行が主体ですが、日々学級閉鎖の学校・幼稚園の報告が増えています。                                                  
                 

01-3.gif <インフルエンザ迅速検査>                               
                          

発熱していること、周囲の流行状況、発症からの経過時間(できれば12時間以上)を確認して検査します。 検査は、インフルエンザウイルスが咽頭後壁(鼻の最も後ろの壁)で最初に増殖するので、麺棒を可能な限り奥まで挿入し10秒間留置、最後に擦過して抜き取ります。この時、麺棒は鼻の中で最も出血しやすい場所(キーゼルバッハ部位)を2回通過せざるを得ませんので、仕方なく鼻出血を伴うことがあります。   
検査キットは、感度が最も高く発症後できるだけ早期に陽性になるものを使用していますが、12時間以上経過しないと陽性に出ないこともあります。また、麺棒の挿入が困難で鼻水が多い場合には、かんでいただいた鼻水で検査することもあります。 検査結果は約10分ほどで出ますので、隔離カーテンの中で暫くお待ちください。                                                  


                                                              
01-3.gif <5つのインフルエンザの治療薬 ~ さぁ、どれを選ぶ?>                                                                 
 
                                          
2001年、抗インフルエンザ薬としてタミフル(飲み薬)・リレンザ(吸入)が次々と発売され、インフルエンザの治療は安静と解熱剤から抗インフルエンザ薬で早期に解熱させる方向に大きく舵をきりました。しかし、タミフルは脳への移行率が高いことから副反応として中枢神経症状(意識障害、錯乱など)が時に認められたため、1歳未満と10歳代の患者には原則使用禁止となりました。
そして近年、新しい抗インフルエンザ薬が開発され、1回分処方するだけのイナビル、点滴で投与できるラピアクタが使用可能となり、患者様の状態により治療の選択の幅が広がりました。当院でも漢方薬(麻黄湯)の早期投与とあわせ、年齢や病状、過去の使用歴などを考慮しこれら薬剤を処方していますが、改めて各々の薬の長所と短所を列記します。                              
                                         
                                                                                                 

01-3.gif <タミフル 5日間服用>                                           
                                                 
飲み薬で、カプセルを飲み込めれば薬効が期待できます。小さな子供には粉薬(タミフルドライシロップ)があり、体重に合せて量を微調整できます。                                 
                               
  
タミフルの副作用症状は、主に、腹痛、下痢、嘔気などです。2004年に、厚生労働省は、タミフルの副作用として、精神・神経症状(意識障害,異常行動,せん妄,幻覚,妄想,痙攣等)などがまれに現われることがある、と報告しています。 そして2007年厚労省は「10歳以上の未成年者においては、タミフルの処方は差し控えること」という警告を出しました。 しかし、インフルエンザ感染児の異常行動はタミフルを内服していない児でも報告されています。 インフルエンザウイルス自体がそのような “ ワルサ ”をするという説もありますので、タミフル内服にかかわらず発症後2日間くらいはいつもそばにいて子どもを見守ってください。                                           
                   
                                   
処方をするうえでの留意点は、時に中枢神経症状がでることがあるため、年齢制限があることです。                                                                
  
さらに、濫用することで、僅かながら耐性ウイルスが出現してきていることです(感染性、病原性は弱いようですが)。                                                           
                                                            
                                                            
                                                       
01-3.gif <リレンザ 5日間吸入>                                              
                                               
リレンザは1日2回吸入する薬です。特にB型にはタミフルより効果があるといわれています。患者様が粉薬を吸って、気道粘膜まで到達することで薬効を示しますので、小児では5歳以上が適応年齢と考えます。ただ、水溶性の薬剤であるため、リレンザを水(当院では主としてインタール吸入液を使用)に溶かせて吸入器で吸入していただくと、タミフルを内服できない乳幼児でも使用が可能です。中枢神経への移行率が低いため、タミフルが使用できない10代の子供にも処方できます。                      
                       
リレンザは一般的には安全な医薬品で重篤な副作用はほとんどありません。
まれに、顔や上半身の紅潮・熱感、皮膚のカユミ、蕁麻疹、口唇や舌・手足の痺れ感、むくみ、吐き気
などが現れることがあるようですが、このような症状はほとんどきいたことがありません。           
                                                      
処方するうえでの留意点は、吸入手技が不十分だと気道粘膜に到達できず、薬効が期待できないことです。また、リレンザはウイルスを細胞内に閉じ込めて増殖を阻害する薬ですので、体内でウイルスが大量に増殖する前(発症後48時間以内)の吸入開始が原則です。それ以降の吸入開始では治療効果が期待できない恐れもあります。                                   
                                     
                                                                                      
                                                
01-3.gif <イナビル 1回分処方>                                                                 
                                        
2010年に承認された4番目の抗インフルエンザ(吸入)薬です。
10歳以上(2容器40㎎)と10歳未満(1容器20㎎)と年齢で量は異なりますが、1容器につき4回吸引できれば治療が終了するため簡便です。リレンザと同じく吸入して気道粘膜まで薬が到達しないと薬効が期待できないため、乳幼児には使用できません。                            
                     
      
処方するうえでの留意点は、水溶性でないため、リレンザのように吸入器を使った使用もできません。      
1回分のみの処方ですので、失敗はできません。吸入手技の正確さが強く求められます。(リレンザ、イナビルとも薬剤師が詳しく指導していただけますが) 吸入する粉の量が多いため、1容器につき4回吸い込む必要があります。10歳以上の場合2容器ですので、8回吸い込む必要があります。吸入容器の扱いも少しややこしく?初めての場合、説明が必要ですので、高熱でぐったりしているときにこまかな説明を聞いて、間違いなく家で8回吸い込むのは少々不安でわずらわく感じる方もいらっしゃるかもしれません。もし可能なら、薬局さんで薬剤師の指示のもと、その場で8回吸って帰るのが1番確実かもしれません。  (この薬は、インフルエンザの家族内感染の予防にも効果があるといわれています。受験生のいるご家庭で他の家族がインフルに罹ってしまった場合など、緊急避難的に使用することも可能です。ただし、残念ながら予防投与は保険適応ではありませんので、自費での処方になります。)                      

      
               
             
01-3.gif ラピアクタ(点滴薬)                                           
                                                                                                                        
唯一の点滴薬です。重症な場合や嘔吐が激しく内服や吸入が困難な時などに使用します。
イナビル同様、1回の使用で治療は終了です。
欠点は、薬剤が腎臓から排泄されるため腎機能の悪い方は使用できません。また、極めて稀ですが、点滴薬にてアナフィラキシー様症状が早期に出現することがあります。                                                                                       


01-3.gif <麻黄湯(漢方薬)>               
                                                              
上記の抗インフルエンザ薬が乳児に使用できないため、1歳未満の乳児やタミフルが使用できない幼児に使用します。タミフルと同等の効果があるとの報告もあります。作用機序が上記の抗インフルエンザ薬と異なり、体の抵抗力を高めることでインフルエンザウイルスの増殖を抑制する(普通の感冒ウイルスに対しても同じ)ので、上記薬との併用や診断が未確定の段階での早期内服にも利用できます。
欠点は、味がまずくて飲みにくい、短期に複数回の内服が必要なため副反応(興奮、不眠等)がでることがあります。
                 


futaba01a.gif 2)経鼻インフルエンザ生ワクチン(フルミスト)を使用してみました。           
        
                                                            
この冬のインフルエンザ対策として、米国で2年前から導入されている経鼻インフルエンザ生ワクチンを輸入し、当院の職員・家族に年末に接種しました。                    

私も接種(鼻に噴霧するだけです)しましたが、痛みや違和感なく快適に接種できました。
このワクチンは弱体化したインフルエンザウイルスを鼻腔内に噴霧することで疑似感染状態をつくり、免疫を誘導します。 米国のデータでは接種後約1%にインフルエンザ様症状がでるとのことでしたが、当院のスタッフや家族には、特に問題ありませんでした。                  

               
日本では未だ認可されていないワクチンですが、これから有効性を確認したいと考えています(国内の他のクリニックでも、職員・家族・特定の患者様に限定して接種されているようです)。
もし、有効なデータが確認された場合、未承認ワクチンであることを理解いただいた上で、希望される皆様に来季のインフルエンザシーズン前に接種を開始することも考慮しています。      

      
このワクチンを接種できない方は・2歳未満、50歳以上の方 ・5歳未満で喘息の児、1年以内に喘鳴を認めた方・心臓、肺、腎臓、肝臓などの慢性疾患のある方・免疫不全の方などです。(詳しくは、来季のワクチンシーズンにお知らせします。)                                                                                    Dr%E6%B3%A8%E5%B0%84.gif


2013年1月30日
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遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。

ひさしぶりのきっず通信です。

新年とともにノロウイルスの流行も終焉に向かい、先週からインフルエンザの流行がはじまりました。
1月15日には13人のインフルエンザ患者さんが受診され(殆どがA型)、今冬のインフルエンザ流行が近年になく早く、早期にピークに向かう印象です。受験シーズンとも重なり、一層の感染対策が必要だと考えます。

今回は 
1)四種混合(DPT+不活化ポリオ)の入荷遅れについて
2)昨秋から導入している在宅用鼻汁吸引器の貸し出しについて
3)阪大小児科神経グループの臨床研究へのボランティア参加の御願い                       
について述べます。


1) 新しく始まった予防接種(不活化ポリオ、四種混合)の現況  

今回のメインテーマです。昨年9月に待望の不活化ポリオワクチンの定期接種がはじまり、11月からは従来の三種混合ワクチンに不活化ポリオワクチンを追加した四種混合ワクチンが導入され、乳児期の予防接種は大きく前進しました。
しかし、四種混合ワクチンの供給量が暫く過少状態となることが判明し、四種混合ワクチンの代わりに三種混合ワクチン+不活化ポリオワクチンの同時接種に切り替えざるを得なくなりました。そのため不活化ポリオワクチンの不足がドミノ倒しに生じました。  
   

当院では、四種混合ワクチンの在庫がない場合は『三種混合+不活化ポリオ』での接種開始をお薦めしています。 しかし、現状では『不活化ポリオ』も在庫がなくなる見込みです。  
                       
ポリオは昨年春まで生ワクチンで接種されていたため、ワクチンによる患者発生が繰り返し報道されましたが、現在では国内のポリオウイルスは研究施設や製薬会社に保管されたもののみとなり、流行地域に渡航される方以外に国内で感染するリスクはゼロになりました。       
        
なので、四種混合ワクチン接種時期に不活化ポリオの在庫がない場合は、ひとまず赤ちゃんの命にかかわる予防接種の『ヒブ』『肺炎球菌』『三種混合ワクチン』の接種を優先して済ましてから不活化ポリオの接種をするというワクチンスケジュールを提案させて頂きます m(_ _)m   
       

何より避けたいのは、四種混合ワクチンの入荷を待っていて、赤ちゃんが百日咳の免疫を持たないまま人混みに出ることです。 百日咳は普通のカゼのような症状ではじまります。(そのため、確定診断が遅れることが多い疾患です。)続いて咳がひどくなり、顔をまっ赤にして連続性にせき込むようになります。咳のあと急に息を吸い込むので、笛を吹くような音が出ます。熱はでないか、でても微熱程度です。乳幼児は咳で呼吸ができず、チアノーゼやけいれんがおきることがあります。肺炎や脳症などの重い合併症をおこすこともあり、命を落とすこともあります。       
                                   
                         
百日咳は『三種混合ワクチン』で予防できます。                  
 
                        

四種混合ワクチンの供給は、今春以降には改善する見込みであり、不活化ポリオ(単独)ワクチンの接種をお待ちいただいている皆さんも順次接種可能になる見込みです。
(ポリオワクチンは、米国では3回目接種時期が1歳以降に設定されており、もし2回目と3回目の間隔があいていても問題はありません。)            
   

        
                               

             
2) 昨秋から導入している在宅用鼻汁吸引器貸し出しについて            
                                      
                                   
乳児期は鼻呼吸が主体で、たかが鼻汁、鼻閉で「寝付けない」、「何度もおきてしまう」、「哺乳量が低下」する等の症状を引き起こします。そのため、市販の鼻吸い器などが利用されていますが、なかなか鼻汁はうまく吸引できないようです。                                   
                                                                  
昨年9月に医療用器具としてコンパクトな吸引器『スマイルキュート』が発売されました。
早速当院で3台購入し、子供が上記症状でお困りの方達に1週間単位で貸し出ししてきました。
初回貸し出し時のみ個人用の先端カニューレを1050円で購入する必要がありますが、市販のものに比べ吸引圧が高く、症状の軽減に役立っています。鼻汁吸引は中耳炎の治療・予防にも有効とされており、中耳炎を繰り返す乳幼児にもかなり有用と思います。          
                                                                             
          
2) 阪大小児科神経グループの臨床研究へのボランティア参加の御願い         
            
    
近年、自閉症(アスペルガー症候群を含む)、注意欠陥多動症候群、学習障害などの軽度発達障害と総称される疾患群が家庭・教育の現場で大きな問題になっています。                    
      
従来、「親の教育が悪い」とされ、適切な対応・治療が十分に行われてきませんでしたが、脳科学的研究の進展に伴い、病態解明が進んでいます。大阪大学医学部小児科神経グループにも多くの上記疾患群の患者さんが来られ、心理テスト、頭部MRI、脳磁図などの検査が行われていますが、比較検討対象になるこの年齢(6歳ー15歳)の正常データの集積が乏しく、健常児の検査ボランティアを募集しています。いずれも害がなく20分程度で終了する検査で、日時も出来るだけボランティアの都合に合せていただけるようです。今回は男児のみを募集していますが、考慮いただける保護者の方がおられれば、お申し出ください。       

                                                                                                        Dr%E6%B3%A8%E5%B0%84.gif


2013年1月20日
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