ふじかわきっず通信

ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチン、そして子宮頚がんワクチンも

今回は、つい最近接種可能となった肺炎球菌ワクチンの詳細を述べるとともに、ヒブワクチンと両方接種することで、子供たちに期待できる具体的メリットをお話します。後半は、もうひとつ新しくはじまった子宮頸癌ワクチンについてもお話します。(今回、長文になりそう。。。)


一般外来を受診される患者様の約半数は発熱を主症状としますが、私たち小児科医は、その原因を診断するため、問診・診察・検査を行います。発熱の診断は、突き詰めればウイルス感染(風邪)か細菌(バイキン)感染かを鑑別したいわけで、それを判断する手段として血液検査も施行します。外来小児科学会の主要な先生方の共同研究で以下のことが判明しています。


① 5歳未満で38度以上の発熱児の0.2%程度が菌血症(細菌が血管内まで侵入)
② 3歳未満で39度以上の発熱児の2-5%が菌血症

また、米国の報告では、生後3ヶ月から3歳の39度以上の発熱児で、血液検査にて白血球が15000以上の場合に、菌血症(細菌感染)を疑うとされています。


ただ、菌血症の原因となる細菌にも、急速に悪化する急性侵襲性細菌(髄膜炎、敗血症、重症肺炎等原因菌)と症状の進行がやや緩徐な非侵襲性細菌があり、急性侵襲性細菌の約90%(新生児期を除く)がヒブ(インフルエンザ桿菌b型)と肺炎球菌を占めるため、世界では約20年前からヒブワクチンが、約10年前から肺炎球菌クチンが接種されるようになりました。
両者を定期接種している国では、乳幼児の急性侵襲性細菌感染症が90%以上減少し、他の副次的効果も含め、極めて有効なワクチンと認知されています。日本では欧米より大きく遅れて 平成20年12月からヒブワクチンが、今年2月末から肺炎球菌ワクチンが任意で接種できるようになりました。


%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%9A%E3%82%A2.gif 1)肺炎球菌ワクチン(7価)


肺炎球菌には数十種類の血清型がありますが、今回のワクチンには特に頻度が高く重症化傾向の強い7つの血清型株に対する肺炎球菌結合型ワクチンです(以下、PCV-7と略します)。
“ 肺炎 ”球菌という名前ですが、肺炎だけでなく、長引く中耳炎髄膜炎、菌血症など広くの感染症に効果があることが認められています。


接種時期: 生後2ヶ月以上9歳未満の乳児から子供に接種できますが、最も標準的スケジュールは、生後3ヶ月から4週以上の間隔をあけて3回(初回免疫)、その後、月齢12-15月に1回(追加免疫)接種します。その時期までに接種が開始できなかった場合、生後7ヶ月以上の乳児は、初回免疫が2回になります。1歳以上2歳未満の幼児には60日間以上の間隔で2回、2歳以上9歳未満(特に5歳まで)が1回接種ですが、乳児の接種時期は、三種混合ワクチン、ヒブワクチンと近接しているため、スケジュールの組み方で3種類のワクチンを同日接種することも可能です(ヒブの供給が潤沢になれば)。


副作用は、三種混合ワクチンとほぼ同様で、接種部位の腫脹と、接種後1-2日の微熱ですが、接種開始10年以上(97カ国)たちますが重大な副作用報告は、ありません。有効率は97%で、粘膜にまでワクチンによって産生された抗体が到達するため、接種後の子供たちの上気道粘膜にこれら血清型の肺炎球菌は生存することができません。結果として、周囲の子供への感染も減少するとされています。

<ヒブと肺炎球菌ワクチンの両者を接種することのメリット>

ご家族の皆さんは、お子さんが夜に急な高熱に見舞われたときに、重症な病気ではないかと心配されるここと思いますが、ヒブと肺炎球菌ワクチンを接種しているお子さんは、急性侵襲性細菌感染症のリスクは10分の1以下にできますので、夜間の急な高熱も風邪や侵襲度の低い細菌感染と考え、翌日かかりつけ医を受診するだけで十分です。医師も数日経過を見る余裕ができますので「不必要な救急受診」「不用意な念のため抗生剤の処方」が減少し、小児救急の疲弊の改善、社会問題化している抗生剤耐性肺炎球菌(約5割)を減少できると考えられます。


ヒブ及び肺炎球菌の感染の頻度は、生後6-9ヶ月にピークを迎えますので、乳児期前半にヒブの接種とともにPCV-7を接種するのが理想的ですが、遅くとも保育所や幼稚園等の集団保育を始める前に是非接種したいワクチンです。


%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%9A%E3%82%A2.gif 2)子宮頸癌ワクチン(パピローマウイルスワクチン)


1990年代に女性の子宮頸癌は子宮頚部へのパピローマウイルスの持続感染に起因することが判明し、初めての癌撲滅ワクチンとして、世界で広がりました。パピローマウイルスは本来弱毒のため、子宮頚部への感染と治癒を繰り返しますが、持続感染に陥った患者様の一部が前がん状態 → 頚部癌へと進展するため、特に推奨される初交前の思春期の女性(免疫獲得も極めて良好です)、一般女性へのワクチン接種で、少なくとも45歳までの女性には発ガン抑制に有効であると報告されています。子宮頸癌は約35歳で発症し、年間4000人もの命を奪う(配偶者や子供にも多大な影響)病気ですので、今回のワクチンと成人してからの定期健診で、成人女性の間からこの癌を撲滅できれば、若年女性の癌死を大幅に減らせることができます。


接種時期: 優先対象年齢は11歳から14歳の女性ですが、初交前の若い女性には同様の効果があると考えられます。3回の接種(初回、1ヶ月後、6ヶ月後)が必須です。尚、このワクチンは、小学校高学年から中学生が対象になるため、一般外来の時間(夕方診療や土曜日)でも接種可能ですが、初回接種時は、1週間前までに電話予約下さい。


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追伸①: 子宮頸癌ワクチンを長女(12歳)にすでに2回接種しました、筋肉注射にかかわらず、インフルエンザワクチンと同等の痛みとのことで、副作用もありませんでした。安心して皆様も接種していただければと思います。


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追伸②: PCV-7を接種開始して約2カ月(200接種以上)経過しましたが、従来のワクチンに比べて、接種後1-2日で発熱(37.5-38.0度程度)されるお子さんがやや多いようです。免疫獲得を強めるための成分(アジュバント)が関与しているようですが、短期間で速やかに軽快されています。


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追伸③: 肺炎球菌ワクチンだけでなく、ヒブワクチン、子宮頸癌ワクチン、水痘ワクチンンを定期接種化(国費負担で肺炎球菌・ヒブ・水痘を0歳児、子宮頸癌ワクチンは12歳児に全員接種)にした場合の経済的メリット(接種費用―罹患時の医療費・介護者の休業費)を計算した論文が出ていますが、子宮頸癌ワクチンで190億円、ヒブで82億円、肺炎球菌で391億円、水痘ワクチンで390億円が、毎年黒字になるデータが示されています。また、これらは大変高価なワクチンですが、ワクチンで防げたはずの病気で子供を亡くした親御さんたちの苦悩、後悔の念は、お金では消し去ることはできません。


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追伸④: 先日のワクチン研究会で、「我々日本人は、毎年1000人の子供たちを東尋坊の崖から突き落としている(毎年、ヒブ・肺炎球菌で髄膜炎になる子供たちの数)」と表現された先生がおられましたが、世界の医療先進国にならって、これらワクチンが一刻も早く定期接種として認定されることを、我々小児科医は祈っています。(定期接種で、ヒブとPCV-7の細菌感染症はこの世の中から撲滅できます。)


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追伸⑤: 豊中市の早期乳児へのBCG接種が個別化されました。市の集団接種がなくなり、市に申請登録したクリニックでの個別接種になりましたので、生後3か月になったら早くBCGを受けていただくようお願いします。(大阪は結核の発症率の高い都道府県です。)


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追伸⑥: 5年前から勧奨接種が中止されてきた日本脳炎ワクチンが、昨年の改良型ワクチン発売から10ヶ月遅れて、先日(4月8日)勧奨接種再開の通達がありました。本来の至適年齢である3歳児から再開とのことです。勧奨中止期間に接種漏れした子供(4歳ー8歳)たちについての対応ついての通達は受けていませんが、定期接種ワクチンとして順次接種していくことになると思います。


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「 ワクチンによって毎年何百万人の命が救われ、 数えきれないくらい多くの人々が感染症後遺症から避けることができているのに、それでもなお、一部の人達はワクチン接種の副作用を( 重症であろうがなかろうが )、ほんのわずかでも受け入れようとせず、ますますワクチンに対する反感を募らせている。 絶対にリスクのない医療行為など、あるはずがないのだから、個人のリスクも常に個人と全体に対する益とのバランスにおいて考慮されるべきだ 」と、ハリソン内科学書(内科学の最も権威ある教科書)に書かれているのを、医師向けの新聞で知りました(私の学生時代には、高価で買えませんでした)。 けだし名言です。


★今年も日本小児神経学会出席のため、5月22日(土)は休診させていただきます。%E9%99%A2%E9%95%B7%EF%BC%91.GIF

2010年4月21日
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