ふじかわきっず通信

新年のご挨拶

新年、明けましておめでとうございます。

昨年は、年初より接種を開始した新しいワクチン(インフルエンザ桿菌b型ワクチン:ヒブワクチン)の供給の不確実さ(需要に供給が追いつかない)に右往左往し、5月以降は数十年に1回の新型インフルエンザ発生に翻弄された一年でした。特に、新型インフルエンザの流行は、行政も医療機関も全く予想しない時期・地域からの発生であったため、初期の検疫体制や一部の学校・企業の過剰対応など、今となれば、笑い話のような非合理的対策が採られてきました。
開業医でも、新型インフルエンザの患者発生数・ピーク時期や新型ワクチン供給・需要について全く予想が立たず、ストレスの多い年後半でした。


<小児科開業医の苦悩とジレンマ、そしてお詫び>(新型インフルエンザについて)
新型インフルエンザは、5月に関西から発生し、秋以降は幼稚園児から中学生を中心に大流行(パンデミック)し、12月までに5歳から14歳の幼児から中学生の約半数が罹患する事態となりました。患者さんの7割以上がこの年齢層に集中したため、9月中旬以降は、小児科クリニックは、多くの新型インフルエンザ、或いは新型インフルエンザを心配される患者様であふれました。その流行は、一部の予想(10月初めがピークでその後、終焉に向かう)を裏切り、ほぼ年末まで次第に年齢層を広げながら続きました。クリニックでは、一人でも多くの患者様を診ようと、スタッフとともに昼休みもほとんどとらず、夜遅くまで診察しましたが、あまりにも多くの受診予約があったため、仕方なく何日も予約システムを早期停止する事態となりました。(受診希望にもかかわらず予約を取れなかった皆様、申し訳ありませんでした。)

結果として、現時点では新型インフルエンザの重症者、死亡者は極めて少ないことが判明(現時点で、死亡率は約13万人に1人程度、入院率は約900人に1人程度)、特に日本は諸外国に比べて飛びぬけて良い結果となり、「世界一の保健医療システムの国」(WHOによる)を証明した形となりました。しかし、一部の患者様で、感染初日に急速に進行して一気に肺炎になる例や、抗インフルエンザ薬で一旦解熱したにもかかわらず、発症4日目ごろより発熱・咳が悪化し、やはり肺炎に進行して紹介入院を必要とした例が10例近くあり、必ずしも季節型インフルエンザとは同一でない印象を持ちました。年明けも、暫く流行が継続しそうですが、新型インフルエンザに罹患した場合、注意深い観察が必要だと思われました。

新型インフルエンザワクチンについて
新型インフルエンザワクチンは、10月下旬より配給が始まりましたが(流行の後ろを追いかけるように)、初期の供給本数があまりにも少ないこと、行政の優先接種対象者数の過小評価と一方的な前倒し報道、実際の接種は医療機関(ほとんどが開業医)に依存するにもかかわらず医療機関毎の供給本数・時期が直前まで連絡されないこと、原則予約接種を求められたこと等、多くの接種希望に到底対応できませんでした。また、優先接種基準に従い、当初はワクチンが納入するたびに、数日前から予約開始日時を公表して順次ウエブ予約を受け付ける方式で開始しましたが、予約システムの会社から一度にアクセスが殺到してシステムエラーを生じる可能性が大きいとの連絡を受け、抜き打ち的な予約開始掲示(HP,メール配信)に切り替えたため、予約を取れなかった患者様から多くのお叱りの連絡を受けました。前記の事情があるにせよ、全ての希望者に早急に接種できなかったことをお詫び申し上げます。


1月から、いよいよ中学生も接種対象者になりますが、受験生を中心に未罹患のお子さんは是非、接種を受けてください。少なくとも暫くは季節型インフルエンザを次第に交えながらも新型インフルエンザの流行は続くようです。(外国製のインフルエンザワクチンは高齢者を対象に接種が2月から開始されますが、当院で接種するワクチンは全て国産のワクチンです。)


<今年、始まること・・・新しいワクチンの開始、BCGの個別接種化など>

ヒトパピローマウイルスワクチン(子宮頸癌ワクチン
インフルエンザの流行のどさくさの中、12月22日より子宮頸癌ワクチン(ヒトパピローマウイルスに対するワクチン)が開始されました。女性の癌の第2位で若年層に多い子宮頸癌は、全てがヒトパピローマウイルスの子宮頚部への感染が原因であると判明し、欧州を中心に接種が世界に広がりました。当ワクチンには約70%の発ガン抑制効果があるとされ、従来の子宮がん検診と組み合わせることで、将来、日本から子宮頸癌の撲滅が期待されています。11歳から14歳の女性を優先接種対象(臨床研究では45歳の女性まで有効性が報告されていますが)としますが、任意接種(全額自己負担)の上、3回の接種が必要(1回18000円程度?)なため、接種率が低くなることが危惧されます。発症によって失われる代償があまりにも大きい(母や妻を失う、患者様は多大な労苦を背負う)ため、公的補助など社会全体で接種率向上が求められるワクチンです。


肺炎球菌ワクチン
待ち焦がれたワクチンが、今年(4月ごろ)から、ついに導入されます。子どもの罹患する呼吸器感染症の原因菌として最も頻度が高く、肺炎、中耳炎、化膿性髄膜炎、敗血症の原因菌と有名で、発症するとインフルエンザ桿菌b型(ヒブ)感染症同様、急速に悪化し重篤な後遺症や急速な結果となる場合があります。また、抗生剤への耐性化が進み、小児で検出される肺炎球菌の半数近くが抗生剤に耐性化を示す(治療しても良くならない)点でも重要です。私たちが発熱患者さんを診た場合でも絶えず念頭に置いている細菌で、血液検査を施行したり、「念のため抗生剤」を処方する大きな動機になっています(これがまた、耐性菌を生み出す原因になっています)。
欧州の報告では、ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンを導入した国では、小児科救急における血液検査・抗生剤点滴・入院対応の頻度が、接種開始前に比べ1/5に激減し、小児科救急の疲弊改善、抗生剤使用量の激減(耐性菌の減少)、医療費の抑制に繋がっています。全ての子どもたちに接種できるよう、ヒブワクチンを含め、1日も早い定期接種化が望まれます。


BCGの個別接種化
今年の4月から、市が集団接種してきたBCGが個別接種(かかりつけ医で接種)に変更になります(吹田市などでは既に数年前から個別接種されていました)。
乳児期早期(3-6ヶ月)にBCGを接種する理由は、乳児が罹患すると結核性髄膜炎や粟粒結核といった重症結核感染症に進みやすいためです。大阪は日本でも有数の結核多発地域です。ぜひ、決まられた時期での接種をお願いします。


新年の最後に
インフルエンザ騒動のなかで、日本のワクチン接種の後進性に改めてスポット当たっています。医療費削減の話題も盛んに取り上げられていますが、現在の三種混合ワクチンにヒブ+肺炎球菌ワクチンを重ねることで、集団保育を受けている乳幼児を中心に、不要な感染症、不要な抗生剤投与、不要な救急受診が大幅に減らせる可能性があります。また、ヒトパピローマウイルスワクチンの女児全員への接種で、毎年4000人が死亡している子宮頸癌を著減できる可能性があります。子ども手当も大賛成ですが、子どもを安心して育てられる世の中に近づけるために、予防接種行政が大きく転換されること(定期接種化)を望む年初です。

2010年1月04日
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